
写真はイメージです
年賀状は、新年の挨拶に加えて、日頃の感謝や今後の関係を大切にしたいという気持ちを伝える、日本ならではの習わしです。
メールやSNSが当たり前になった現在でも、手書きの年賀状には独特の温もりがあり、受け取る側に特別な印象を与えます。
しかし、書き方や表現を間違えると、意図せず失礼にあたってしまうこともあります。
この記事では、年賀状を書く際の基本的なポイントや気を付けたいマナーをわかりやすく解説致します。
相手別に使える文例も掲載していますので、年賀状づくりの参考としてぜひお役立てください。
年賀状の書き方とマナー
年賀状は、表面と裏面のどちらも適切に整えることで、より礼儀正しく心のこもった印象を相手に伝えることができます。
ここでは、宛名や差出人情報の書き方、赤字で記す「朱書き」の扱い方、さらに賀詞や添え書きの配置といった、年賀状全体に共通する基本の作法やマナーについて詳しくご紹介します。
年賀状の表面(宛名面)の基本
年賀状の表面を書く際には、いくつか押さえておきたいポイントがあります。これは通常のはがきを送る場合にも共通するため、一度覚えておけば今後さまざまな場面で応用できます。
丁寧な印象を与えるためには、レイアウトも整えて、全体がバランスよく見えるよう工夫することが大切です。
まずは宛名を書く際の基本的な決まりを見直しておきましょう。必要事項は決められた形式に沿って記入するのがマナーです。宛名の正しい書き方と避けたい書き方については、見本として良い例と悪い例の画像も紹介しますので、あわせて参考にしてみてください。
宛先の住所
宛名の住所を書くときは、文字の大きさや配置に注意を払うことで、全体の印象が整い、より丁寧な仕上がりになります。特に次の点を意識して書くと、バランスが取れた美しいレイアウトを作ることができます。
● 宛先の住所を書く際のポイント
・宛名よりも小さい文字で書く
・郵便番号と右端の位置を揃える
・住所の書き始めは宛名よりやや高い位置から
・都道府県は省略せずに記載する(とくに目上の方へ送る場合)
郵便番号は、郵便局の機械が正確に読み取れるよう、黒一色の算用数字で大きく、はっきりと記入することが重要です。
また、番地などの数字については、縦書きの場合は漢数字(〇、一、二、三 など)を、横書きの場合は算用数字(1、2、3 など)を使用しても問題ありません。
書式に合わせた数字の使い分けをすることで、全体の見た目も整い、より丁寧な印象になります。
会社名、部署名、役職名
企業へ年賀状を送る際は、社名を省略せず正式名称で記載することが大切です。
会社名を表す「㈱」や「㈲」といった略記は用いず、必ず「株式会社」「有限会社」といった正式表記で書くようにしましょう。
丁寧な書き方は相手への礼儀にもつながります。
宛名、敬称
宛名や敬称を記入する際には、相手との関係や送り先の種類に合わせた適切な書き方を意識することが大切です。
個人宛ての場合、家族で受け取る連名の場合、あるいは企業や団体など法人宛ての場合など、それぞれにふさわしい表記方法があります。
状況に応じた正しい敬称や記載形式を選ぶことで、相手への礼儀がしっかり伝わり、より丁寧な年賀状になります。
●個人宛の場合
敬称の基本は「様」を用いるのが一般的です。また、学校の先生や恩師など、特別な立場の相手に対しては「先生」と表記するのが適切です。
●連名で送る場合
連名で記載する際は、右端に世帯主の氏名を置き、その左側に配偶者、さらに左へ子どもの名前という順に並べるのが一般的です。
それぞれの氏名には「様」を付けて表記します。ただし、お子さまの人数が多い場合は、個別に書かずに「ご家族御一同様」とまとめて記す形でも差し支えありません。
●会社・部署・団体宛の場合
会社名や部署名のみを宛先とする場合は、敬称として「御中」を付けるのが適切です。
一方で、個人名まで明記する際には、役職や肩書きを記した後に氏名を書き、敬称は「様」を用います。この場合、「御中」と「様」を併記することはマナー上避けるようにしましょう。
差出人名、住所
差出人の住所を記載する位置は、年賀状のデザインや送り方によって適切な場所が変わります。確実に相手へ届けるため、そして失礼のない形で受け取ってもらうためにも、次に挙げるポイントを意識して配置することが大切です。
●裏面(デザイン面)に記載している場合
宛名面に差出人の氏名や住所を必ず記載する必要はありません。
●裏面に記載していない場合
宛名面の左下には、差出人の「住所・氏名・郵便番号」をまとめて記載します。
文字は宛名よりも控えめな大きさにし、全体のバランスを整えると見やすい仕上がりになります。
裏面のデザインをきれいに見せたい場合は、差出人情報を宛名面に集約することで、レイアウトを崩さずに済みます。
いずれの面に記載する場合でも、相手が一目で差出人を確認できるよう、丁寧で読みやすい文字で書くことが大切です。
朱書き
「朱書き(しゅがき)」とは、封筒やはがきに赤字で「速達」「親展」などの文字を記すことで、特別な扱いが必要であることを強調するための表記方法です。
市販の年賀はがきにはあらかじめ「年賀」と赤字で印字されていますが、通常の郵便はがきや私製はがきを年賀状として使用する際には、切手のすぐ下に赤色で「年賀」と明記する必要があります。
この朱書きを忘れると通常郵便として処理され、元旦より前に届いてしまう恐れがありますので、必ず忘れずに記入しましょう。
裏面(デザイン面)の書き方
年賀状の裏面には、賀詞や挨拶文といった新年のご挨拶に必要な要素を、全体のバランスを意識しながら配置していきます。
文章の並びには一定の流れがあり、その順序を守ることで読みやすく、受け取った相手にも丁寧な印象を与えることができます。
次にご紹介する構成に沿って記載すれば、見た目にも美しくまとまりのある年賀状に仕上がります。
【基本的な構成の順番】
① 賀詞
② 挨拶文(本文)
③ 添え書き
④ 新年の年号・日付
⑤ 差出人名・住所
①賀詞
賀詞(がし)とは、本来は年賀状に限らず、お祝いの気持ちを伝えるために用いられる言葉全般を指します。
賀詞には、漢字だけで簡潔に表すものから、文章形式で丁寧に気持ちを伝えるものまでさまざまな種類があります。
それぞれに意味や使い分けがあるため、誰に送る年賀状なのかを踏まえて、適切な表現を選ぶことが大切です。
●例
・謹賀新年
・あけましておめでとうございます
・賀正・新春のお慶びを申し上げます
・HAPPY NEW YEAR
挨拶文(本文)
年賀状の挨拶文は、「お礼」「祈り」「願い」の3つを柱として構成すると、丁寧で整った印象になります。
まず「お礼」では、日頃お世話になっていることへの感謝を言葉にします。
●お礼の例
・旧年中はひとかたならぬお力添えをいただき、誠にありがとうございました
・昨年は大変お世話になり、心より御礼申し上げます
次に「祈り」では、相手の健康やさらなる活躍を願う気持ちを添えます。
●祈りの例
・皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます
・貴社の一層のご発展と皆様のご健勝を心よりお祈りいたします
そして「願い」では、今後の関係の継続や支援を求める言葉を記します。
●願いの例
・本年も変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます
・今年も引き続きご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます
この3つの軸を意識することで、年賀状の文面にメリハリが生まれ、相手に好印象を与える挨拶文に仕上がります。
添え書き
転職や出産といった最新の出来事、共通の趣味にまつわる話題、新年に向けた抱負などを添える場合は、長くなりすぎないよう簡潔にまとめるのがポイントです。
●添え書きの例
・新しい住まいにもぜひ遊びにお越しください。
・昨年以上の成果を目指し、精進してまいります。
新年の年号、日付
年賀状を作成するときは、「今年」という表現を使わないよう気をつける必要があります。
日付を記載する場合は、
「令和○年 元旦」や「202○年1月1日」といった形で、和暦・西暦のどちらを用いても問題ありません。
シンプルで整った日付表記にすることで、より丁寧な印象を与えられます。
年賀状の賀詞を選ぶポイント
年賀状で使われる「賀正」や「新春」などの賀詞には、それぞれ独自の意味や役割があります。どれも短く簡潔な言葉ですが、送り先によっては適切な使い分けが求められるため、表現の選び方には気を配る必要があります。
よく使われる賀詞の意味
| 賀正:新年を祝い正月を寿ぐ意味を持つ言葉です。 新春:一年の始まりを告げる新たな季節の訪れを表す表現です。 |
これらの賀詞は簡潔で使いやすい一方、敬意を含まない表現にあたるため、年賀状を送る相手が目上の方の場合には避けたほうが無難です。親しい友人や同年代の相手であれば問題ありませんが、状況に応じた言葉選びが必要になります。
ここでは、「文章形式の賀詞」から「一文字で表す賀詞」まで種類別に詳しく取り上げ、重複を防ぐための注意点についても解説します。
文章の賀詞
文章形式の賀詞は、丁寧さや敬意を十分に示せるため、目上の方へ送る年賀状にふさわしい表現です。かしこまりすぎず、ほどよい温かみを添えたいときにも使いやすい点が魅力です。
| あけましておめでとうございます 謹んで新春のお慶びを申し上げます 謹んで新春の寿ぎを申し上げます 初春のお慶びを申し上げます |
四文字の賀詞と意味
「謹賀新年」をはじめとする四文字の賀詞は、格式が高く丁寧な敬意を含む表現のため、ビジネスシーンや公的な相手、年長者への年賀状に適しています。年賀状で特に使用頻度の高い形式のひとつとして広く親しまれています。
| 謹賀新年:謹んで新年のお祝いを申し上げます 謹賀新春:謹んで新春のお祝いを申し上げます 恭賀新年:恭しく新年のお祝いを申し上げます 恭賀新春:恭しく新春のお祝いを申し上げます 新春来福:新春に福が来ることをお祈り申し上げます |
二文字の賀詞と意味
「賀正」や「迎春」といった二文字の賀詞は簡潔で扱いやすいものの、敬意を示す要素が含まれていないため、年長者や立場の上の方には用いない方が安心です。友人や同年代など、気軽にやり取りできる相手に向いている表現です。
| 迎春:新春を迎えること 賀正:新年を祝うこと 新春:新年 初春 慶春:新春をよろこぶこと 頌春:新年をことほぐこと 寿春:春をことほぐ・めでたい春 賀春:春を祝うこと 瑞春:吉兆をもたらす春 |
一文字の賀詞と意味
「寿」や「福」などの一文字賀詞は、デザイン性を重視した年賀状や親しい相手への挨拶でよく用いられる表現です。短いながらも縁起の良さを備えており、気軽に使えるカジュアルなシーンに向いています。
| 寿:祝い事やめでたさを表す語です。 福:幸運や幸福を示す言葉です。 春:正月や新しい年の始まりを意味します。 賀:祝意や祝いの気持ちを表す語です。 禧:祝福の意味を持つ表現です。 慶:喜びやさまざまな祝いごとを示す言葉です。 栄:繁栄や栄える様子を表します。 光:明るさや希望を象徴する語です。 |
賀詞の重複は避ける
取引先や会社の上司への年賀状
ビジネス相手への年賀状は、信頼関係を深めるための重要な新年のご挨拶です。基本的な形式やマナーを踏まえ、礼を欠くことのないよう丁寧に送りましょう。
●取引先や上司へ送る年賀状で気をつけるポイント
・デザインの選択:フォーマルな印象のものを選び、カジュアルすぎる図案は避けます。
・宛名と差出人の扱い:ビジネス相手には連名記載を用いず、明確に記載することがマナーです。
●例文
| 昨年は温かいご指導とご支援をいただき、誠にありがとうございました 本年もより一層業務に精進してまいります 今後とも変わらぬご指導を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます |
| 謹んで新年のお喜びを申し上げます 平素より格別のご指導をいただき、心より感謝しております 本年も一層の成長を目指し、努めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします |
| 貴社ますますのご繁栄をお慶び申し上げます 昨年は格別のご高配をいただき、誠にありがとうございました 本年が貴社にとって実り多い一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます |
家族・親戚への年賀状
家族や親戚に向けた年賀状は、形式にこだわらず、あたたかさのある言葉を添えることで、より親しみを感じてもらえます。デザインや表現の自由度が高い点も大きな特徴です。
●家族や親戚への年賀状で気をつけるポイント
・デザインの選び方:自由度が高く、写真を使ったデザインもよく合います。
・宛名と差出人のポイント:家族の場合は連名で記載するのが一般的です。
●例文
| 日頃より温かいお心配りをいただき、ありがとうございます ご無沙汰しておりますが、皆さまお変わりなくお過ごしでしょうか またお会いできる日を心より楽しみにしております |
| 新年のお喜びを申し上げます 今年はぜひ家族そろってご挨拶に伺いたいと思っております 寒さが続きますので、どうぞお身体を大切にお過ごしください |
友人・知人への年賀状
親しい友人や知人には、近年は年賀状ではなくSNSで新年の挨拶を済ませる人も増えているでしょう。それでも、気持ちを込めて送られた年賀状を受け取ると、やはり嬉しさを感じるものです。
●親しい友人や知人への年賀状で気をつけるポイント
・デザインの選び方:自分の個性が伝わるデザインを選ぶのがおすすめです。
●例文
| 昨年は何かとお世話になり、ありがとうございました 今年はぜひ一緒に○○へ出かけましょう お互いに充実した一年になりますよう、心より願っております |
| お元気に過ごしていますか 今年こそはゆっくり会える時間をつくりたいですね 新しい一年が素晴らしいものになりますよう、お祈りしています |
恩師・先生への年賀状
現在お世話になっている先生や、かつての恩師に年賀状を送る際にも、いくつか注意したい点があります。宛名に使う敬称は「先生」で十分であり、「○○先生様」と二重敬称にならないよう気をつけましょう。
また、賀詞は必ず目上の方にふさわしい表現を選びます。「あけましておめでとうございます」や「謹んで新春のお慶びを申し上げます」など、丁寧な挨拶が一般的です。
●小学生から先生への例文
| 賀詞:「あけましておめでとうございます」「新年のお喜びを申し上げます」 お礼:「昨年は大変お世話になりました」「いつも楽しい授業をしてくださりありがとうございます」 祈り:「どうぞお身体に気をつけてお過ごしください」 願い:「先生とまた○○で遊びたいです」「今年もいっそう努力いたします」 |
●中学生から先生への例文

