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セクハラ(セクシュアルハラスメント)とは、 相手が望まない性的な言動によって不快感や精神的苦痛を与え、就業環境を害する行為 のことを指します。
セクハラ被害者が抱える悩みは、単なる「不快感」にとどまらず、精神・身体・仕事・人間関係・将来のキャリアにまで深刻な影響を及ぼすことがあります。
この記事では、セクハラの慰謝料の相場(金額)、要件、種類、請求方法、注意点について徹底解説いたします。
セクハラで慰謝料が請求できる要件
セクハラは法律上、不法行為と位置づけられ、以下のいずれかに当たると違法性が認められます。これらにより 精神的苦痛が生じた場合、慰謝料請求が可能になります。
・体を触る、抱きつく、キスを迫るなどの 身体的接触
・性的な発言、外見への執拗なコメント
・性的画像・動画の提示、性的な関係の強要
・食事・デートの強要
・性行為をほのめかす見返り要求(対価型セクハラ)
・職場環境を悪化させる性的言動(環境型セクハラ)
セクハラで請求できる慰謝料の種類
セクハラによって請求できる慰謝料は、精神的苦痛に対するものだけではなく、複数の種類があります。被害状況によっては高額の賠償が認められるケースもあります。セクハラで請求できる慰謝料を以下に解説いたします。
精神的苦痛に対する慰謝料
セクハラ請求の中心となるのが 精神的苦痛への慰謝料 です。以下のような行為が該当します。
・身体への不必要な接触
・性的発言
・下品な冗談
・しつこい誘い
・性的画像の提示
・性的関係の強要
休業損害(働けなかった期間の補償)
セクハラにより精神的ダメージを受けて、休業し場合、その期間の給与減少分を請求できます。
・出勤できなくなった
・休職した
・通院治療のため欠勤した
治療費(医療費)の賠償
心療内科やメンタルクリニックへの通院費、投薬費、カウンセリング費などの実費も損害として請求可能です。
証拠として以下のものが必要となります。
・診療明細
・領収書
・通院記録
後遺障害慰謝料(長期の精神障害)
セクハラによる精神疾患が長期化し、改善が見込めない場合、後遺障害と評価されることがあります。これにより、慰謝料が大幅に増額されるケースもあります。
・うつ病が慢性化
・PTSDが残る
・長期の社会生活困難
逸失利益(将来の収入喪失)
セクハラが原因で、以下のことが、生じた場合、将来の収入に関する損害(逸失利益)を請求できます。
・退職
・配置転換による収入減
・昇進機会の喪失
・キャリア断絶
引っ越し費用・転職費用
被害を避けるためにやむなく転居・転職した場合、状況によってはそれに伴う損害を請求できるケースもあります。
会社の安全配慮義務違反による損害賠償
会社が以下のような義務を怠った場合、会社自身に賠償責任が及びます。この場合、「加害者+会社」に対して損害賠償を求めることが可能です。
・被害相談の放置
・加害者への指導をしない
・セクハラ調査を行わない
・再発防止措置を取らない
懲罰的賠償に近い増額(例外的)
日本では懲罰的損害賠償制度はありませんが、以下のようなことが生じた場合、慰謝料が非常に高額化する例があります。
・反復・継続した悪質なセクハラ
・組織的隠蔽
・パワハラとの複合被害
・重大な精神疾患を誘発
セクハラの慰謝料の相場
●性的発言・不快な視線・執拗な誘いなど
10〜50万円
●身体への接触・強引なキスなど
50〜150万円
●長期・反復的な行為、精神疾患発症
100〜300万円以上
●強制性交、重大な性被害
300万円〜数百万円超
セクハラの慰謝料の請求方法
ここでは、セクハラの慰謝料の請求方法について解説いたします。
| セクハラの慰謝料の請求方法 |
| ➊ 証拠を集める(最重要)
❷ 会社の相談窓口に報告する ❸ 加害者または会社に慰謝料請求 ❹ 労働審判(職場内のセクハラの場合) ❺ 民事訴訟(交渉がまとまらない場合) |
➊ 証拠を集める(最重要)
まずはじめに、セクハラを受けた証拠を集めます。セクハラ請求は 「感情」ではなく「証拠」で勝敗が決まります。証拠集めは、成功の8割を決める最重要ステップです。
セクハラの請求に有効な証拠を以下に記載します。
・録音(暴言・誘い・身体接触を示す音声)
・メール・LINE・チャットの履歴
・防犯カメラ・社内カメラの映像
・性的画像・動画の共有履歴
・被害を記録した日記(日時・場所・内容)
・診断書(心療内科の受診)
・同僚など第三者の証言
録音と診断書は最強クラスの証拠です。
❷ 会社の相談窓口に報告する
企業には「セクハラ防止措置義務」があるため、相談があれば 調査・指導・再発防止の対応を行う義務があります。
会社の相談窓口に相談するメリットにはいかのようなものがあります。
| ・会社側の対応記録が証拠になる ・加害者への指導が行われやすい ・会社に責任(安全配慮義務違反)が及ぶ場合がある |
相談内容は必ず メールで記録に残すのがポイントです。
❸ 加害者または会社に慰謝料を請求する(示談交渉)
セクハラの証拠が揃ったら、加害者または会社へ慰謝料を請求します。慰謝料を請求するポイントを以下に記載します。
| ・セクハラ行為の内容 ・被害状況(精神的苦痛・通院状況など) ・請求金額(慰謝料+実費損害) ・期限(通常2週間) |
通常は 内容証明郵便で送ります。
内容証明郵便とは?
内容証明郵便とは、通常の郵便と違い、送付した文書の内容を日本郵便が証明して保管してくれる特殊な郵便です。
●内容証明郵便で証明される項目
・文書の内容
・差出人
・宛先
・差出年月日
●内容証明郵便を送る目的
・「言った・言わない」の争いを防ぐ
・ 法的交渉を正式に始める意思表示になる
・相手に心理的プレッシャーを与える
❹ 労働審判(職場内のセクハラの場合)
示談で解決しない場合、1~3回の審理で迅速に判断が下る「労働審判」が活用されます。
●労働審判の特徴
・裁判より早い
・手続きが簡易
・審判官+労働問題の専門委員が判断
・解決率が高い
多くのセクハラ案件がこの段階で解決します。
❺民事訴訟(裁判)を起こす
労働審判でまとまらない場合、最終手段として裁判に進みます。
●裁判で認められやすいケース
・証拠が豊富
・精神疾患を発症(診断書あり)
・悪質な行為・複数回・長期にわたる
・会社が放置・隠蔽した
裁判では慰謝料が高額化しやすい傾向にあります。
セクハラの慰謝料請求における注意点
セクハラの慰謝料を請求する際に失敗する要因を以下に記載します。
・証拠が不足している(録音なし・日記なし)
・相談の記録がない(会社が知らないと言い逃れされる)
・被害直後に病院へ行かず診断書が取れない
・SNSや友人への相談だけで満足してしまう
まとめ

セクハラの慰謝料の相場(金額)、要件、種類、請求方法、注意点について解説いたしました。
セクハラの慰謝料請求では、まず 録音・メール・LINE・日記・診断書などの証拠を確保することが最重要です。証拠がなければ加害者が否認した際に立証が難しくなり、慰謝料額にも大きく影響します。
次に、会社の相談窓口や人事部へ被害を正式に報告し、対応履歴を残すことが後の手続きで有利になります。
加害者や会社への請求は内容証明郵便で行うのが一般的で、示談がまとまらない場合は労働審判や民事訴訟で解決を図ります。
慰謝料額は被害の内容、悪質性、証拠の強さ、精神的損害の程度で大きく変動します。

