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名誉毀損とは、他人の社会的評価を低下させる事実を公然と示すことを指し、民事上の不法行為にも刑事罰の対象にもなる重大な権利侵害です。
この記事では、名誉棄損の慰謝料の相場、要件、種類、請求方法、注意点について徹底解説いたします。
名誉棄損とは?
名誉毀損(めいよきそん)とは、「第三者に対して、人の社会的評価を下げるような事実を伝える行為」 をいいます。民事上の不法行為にも刑事罰の対象にもなる重大な権利侵害です。
●社会的評価とは?
・職場での信用
・社会的信用・人間性
・仕事上の評価
・品位・名誉
刑事罰としては、3年以下の懲役または禁錮、50万円以下の罰金が課せられます。
名誉毀損が成立する条件(要件)
以下の3つがそろうと名誉毀損が認められやすくなります。
社会的評価を下げる事実の摘示(事実の提示)
社会的評価を下げる事実の摘示(てきじ)とは、第三者が見聞きできる状態で、その人の信用や評価を損なうような“事実”を示すことを指します。
名誉毀損が成立するうえで最も重要なポイントです。
公然性(第三者が知り得る状況)
公然性とは、発言・情報が不特定または多数の人に伝わり得る状態を指します。
つまり、第三者がアクセスできる状況であれば公然性が認められます。
・SNS投稿
・LINEグループ
・掲示板
・職場での発言
・多数の前での告げ口
特定性(誰のことか第三者が判断できるか)
名誉毀損における 「特定性」 とは、その発言や書き込みが“誰のことを指しているのか第三者が判断できる状態”にあること を意味します。
つまり、名前を明記していなくても、周囲が「あの人のことだ」と分かる状況なら特定性が成立します。
名誉毀損の典型的な事例
名誉棄損にあたる典型的な事例を紹介いたします。
事例1:SNSでの誹謗中傷(最も多い)
(旧Twitter)やInstagramで、
「〇〇は詐欺師」「浮気している」など虚偽投稿を行う。
→ 公然性が非常に高く、慰謝料も高額化します。
事例2:会社内で噂を流される
同僚に対して「金を盗んだらしい」「セクハラしてる」など虚偽情報を流される。
→ 社内評価の低下が明確になります。
事例3:学校でのデマ・いじめ
学校で「万引きした」「異性関係がだらしない」などの虚偽の噂話をされる。
→ 名誉毀損+いじめとして重大です。
事例4:ネット掲示板での悪評書き込み
ネットの掲示板に個人名・会社名を書かれ、「ブラック企業」「犯罪歴あり」などと投稿される。
→ 投稿削除+慰謝料+発信者情報開示請求の流れ。
事例5:地域での根拠なき噂話
「隣の家はDV」「不倫している」という陰口が広まる。
→ 第三者の証言で立証可能。
事例6:虚偽の犯罪通報
ありもしない犯罪を警察に通報し、周囲に広めた場合。
→ 名誉毀損+場合によっては偽計業務妨害に該当する。
名誉棄損の慰謝料の相場
名誉棄損の慰謝料の相場を以下に記載いたします。
・限られた範囲での名誉毀損:10~50万円
・職場・学校での噂拡散:50~100万円
・SNSで広範囲に拡散:50~200万円
・虚偽内容が重大:100~300万円以上
・退職・精神疾患など深刻な損害:数百万円レベル
名誉棄損の慰謝料の請求方法
名誉毀損の慰謝料請求は、証拠の確保 → 加害者への請求 → 交渉 → 裁判という流れで進みます。ここでは、確実に慰謝料を獲得するための方法を、わかりやすく段階ごとに解説します。
| 名誉毀損の慰謝料請求方法 |
| ➊ 証拠を集める(最重要)
❷ 加害者に削除を求める(任意対応) ❸ 内容証明郵便で正式に慰謝料を請求 ❹ 示談交渉を行う ❺ 加害者が匿名の場合は「発信者情報開示請求」行う ❻ 示談が成立しない場合は民事訴訟を行う ❼ 悪質な場合は刑事告訴を行う |
➊ 証拠を集める(最重要)
名誉毀損の成否は 証拠の有無でほぼ決まります。まずはじめに行うことは、証拠を集めることです。
名誉棄損の慰謝料請求に有効な証拠を以下に記載します。
・SNS投稿のスクリーンショット(URL・日時つき)
・書き込みログ
・録音データ(発言証拠)
・第三者の証言
・被害による精神的苦痛の診断書
・拡散状況の記録(リツイート数・コメント数など)
※ネット投稿は削除される前に保存が必須です。
❷ 加害者に削除を求める(任意対応)
SNS投稿や掲示板投稿がある場合は、まず削除依頼を行います。法的手続に進む前の段階ですが、削除がされれば被害は軽減されます。
・DM(危険な場合は不可)
・連絡手段がない場合はサイト管理者に削除申請
❸ 内容証明郵便で正式に慰謝料を請求
示談交渉の第一歩が内容証明郵便による慰謝料の請求です。内容証明は「いつ・誰に・どんな内容を送ったか」を郵便局が証明してくれるため、後の裁判で非常に有利になります。
内容証明郵便には、以下の内容を記載します。
・名誉毀損の事実(日時・場所・内容)
・どのように社会的評価が下がったか
・慰謝料の請求額
・支払期限
・投稿削除・謝罪文の要求(必要に応じて)
❹ 示談交渉を行う
内容証明後、加害者と示談交渉を行います。合意ができれば「示談書」を作成し、双方が署名・押印します。
加害者と示談交渉では、以下のことを決定します。
・慰謝料の金額
・支払日・支払方法
・投稿削除・拡散防止
・再発防止の約束
・謝罪文の有無
❺ 加害者が匿名の場合は「発信者情報開示請求」行う
SNS掲示板での匿名投稿の場合は、「発信者情報開示請求」により投稿者を特定できます。
●発信者情報開示請求の手続きの流れ
➊プロバイダに発信者情報開示請求
❷投稿データのログを保全
❸IPアドレスから投稿者を特定
❹特定後、慰謝料請求へ進む
❻ 示談が成立しない場合は民事訴訟を行う
示談交渉で話し合いがまとまらなければ民事訴訟で慰謝料を請求します。裁判所が認定した慰謝料は強制執行(差押え)が可能になります。
●裁判で認められやすいケース
・虚偽情報を広範囲に拡散された
・被害者の仕事・学校生活に影響した
・精神疾患を発症した
・証拠が明確で強力
❼ 悪質な場合は刑事告訴を行う
名誉棄損が悪質な場合には、刑事告訴を行います。名誉毀損罪は 被害者の告訴がなければ起訴されない(親告罪) です。
●刑事告訴を行うメリット
・警察の捜査対象になる
・加害者に強いプレッシャー
・刑事罰が科されると民事でも有利
虚偽投稿や長期的な誹謗中傷は刑事事件として扱われることもあります。
名誉毀損の慰謝料請求における注意点
名誉毀損の慰謝料請求では、「証拠」「特定」「拡散状況」「請求手続き」 が重要なポイントとなります。特にSNS時代は投稿がすぐ削除されるため、早期対応が非常に重要です。名誉毀損の慰謝料請求における注意点を以下に記載します。
➊ 証拠がなければ慰謝料は難しい
❷ 相手が特定できないと請求できない
❸「真実でも名誉毀損」はあり得る
❹ 公然性があるかがポイント
❺ 過大請求すると逆効果
❻ 感情的に投稿すると逆に名誉毀損で訴えられることがある
まとめ

名誉棄損の慰謝料の相場、要件、種類、請求方法、注意点について解説いたしました。
名誉毀損の慰謝料請求では、まず発言や投稿の証拠を確実に保存することが最も重要です。
SNS投稿や掲示板は削除される可能性が高いため、スクリーンショットやURL、投稿日時、拡散状況などを残しておきます。
次に、加害者が特定できるかどうかが請求の前提となるため、匿名の場合は発信者情報開示請求が必要になります。
慰謝料の請求は口頭ではなく内容証明郵便で正式に行い、投稿削除や再発防止も併せて求めるのが一般的です。示談がまとまれば示談書を作成し、難航すれば民事訴訟で賠償を求めます。

