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学校でお子さまがいじめの対象となった場合、状況によっては加害児童・生徒だけでなく、その保護者や学校の設置者などに慰謝料を求められる可能性があります。
慰謝料の求め方としては、示談による話し合いのほか、民事調停や民事裁判を通して請求する方法もあり、解決までに時間を要するケースも少なくありません。そのため、事前に十分な準備をしておくことが大切です。
この記事では、いじめの慰謝料の相場、要件、種類、請求方法、注意点について徹底解説いたします。
いじめの慰謝料の4つの成立条件
いじめで慰謝料を請求するためには、以下の要件(成立条件)を満たす必要があります。
感情だけでは成立せず、法律上の「損害賠償請求」が可能かどうかが重要なポイントになります。
➊ 不法行為があったこと
いじめの行為が「不法行為」と判断される必要があります。
肉体的な暴力だけではなく、精神的な攻撃、ネットいじめも含まれます。
●不法行為に該当しやすいもの
・暴力・傷害
・脅迫・強要
・名誉毀損
・侮辱
・金銭の強要
・SNSでの誹謗中傷
・無視・仲間外れ等による精神的な苦痛
➋ いじめが原因で精神的苦痛を受けたこと
被害者が、以下のような精神的損害を受けていることが必要です。
診断書があると非常に強い証拠になります。
・不安
・恐怖
・PTSD
・不眠
・不登校
・うつ
➌ 加害行為と損害の因果関係
いじめ行為と精神的損害に直接的な関係があることを示す必要があります。
・いじめ → 不登校になった
・いじめ → 精神科に通院
・いじめ → PTSD診断
この「つながり」を証明することが重要です。
➍ 被害の証拠があること(最重要)
慰謝料は証拠がなければほぼ認められません。
●いじめの慰謝料請求に有効な証拠
・LINEやSNSのやり取り
・録音データ
・写真、動画
・友人の証言
・学校への相談履歴
・心療内科・精神科の診断書
いじめで慰謝料を請求できる相手
いじめの慰謝料を請求できる相手は、状況に応じて複数が対象になります。
●加害児童・生徒
・未成年でも請求可能(実務では保護者が支払い)
●加害者の保護者
・監督責任を問える場合があります。
●学校または設置者(公立・私立)
・学校が適切な対応をしていなかった
・いじめ防止措置が不十分
→ 学校側の責任(安全配慮義務違反)として請求できることがある
いじめの慰謝料の相場
いじめの慰謝料の相場を以下に記載します。
・比較的軽度:10〜50万円
・不登校・転校:50〜150万円
・精神疾患・長期通院:100〜300万円以上
・自殺未遂・重大な後遺症:数百万円〜数千万円の判例も
いじめの慰謝料請求の方法について
いじめの慰謝料請求は、証拠を集めて、相手(加害者・保護者・学校)に対し正式に損害賠償を求める手続きです。示談→調停→裁判という順で進むのが一般的です。
➊証拠を集める(最も重要)
まず初めにやらなければならないことは、いじめの証拠を集めることです。証拠が少ないと慰謝料はほとんど認められません。いじめの慰謝料は 証拠がすべて です。いじめの慰謝料を請求するには、以下が有効な証拠となります。
●いじめの慰謝料請求に有効な証拠
・LINEやSNSのやり取り
・録音データ
・写真、動画
・友人の証言
・学校への相談履歴
・心療内科・精神科の診断書
❷いじめの事実を学校に報告する
次に行うことは、いじめの事実を学校へ報告することです。学校は「安全配慮義務」があるため、いじめを把握したのに放置すれば責任(損害賠償)が問われます。
※相談記録を残すことが後に重要な証拠になります。
❸加害者(保護者・学校)に慰謝料を請求する
加害者(保護者・学校)に慰謝料を請求します。
慰謝料を請求は、内容証明郵便にて行います。内容証明郵便には、以下を記載します。
●内容証明郵便の記載事項
・いじめの事実
・受けた損害
・請求額
・期限
❹示談交渉を行う
加害者や保護者、学校側と示談交渉を行い。慰謝料の金額などを調整します。
いじめの示談内容は以下となります。
・慰謝料額
・支払方法
・再発防止
・謝罪
・記録の削除
合意に至れば示談書を作成します。
❺民事調停を行う
示談がまとまらない場合、裁判所で調停手続きに進みます。
中立の調停委員が間に入り解決を図ります。
❻民事裁判を行う
調停でも解決しない場合は民事裁判を行います。
この段階でも証拠の強さが勝敗を左右します。
いじめの慰謝料請求における注意点
いじめの慰謝料請求では、感情だけで動かず、証拠と手続きを丁寧に行うことが非常に重要です。特に学校相手の場合は、主張だけでは認められません。以下の点に注意してください。
注意点1:証拠がないと慰謝料はほぼ認められない
証拠がないと慰謝料はほぼ認められません。以下のいじめの証拠は、必ず残して下さい。
・LINEやSNSの記録
・録音
・医師の診断書
・学校への相談履歴
注意点2:感情的に対応すると不利になる
いじめの慰謝料請求は、感情的に対応すると不利になります。相手と直接口論したりSNSに投稿すると、逆に名誉毀損やトラブルになる可能性があるため注意して下さい。
注意点3:学校への相談記録を残す
学校への相談記録は必ず残して下さい。教師や校長に相談した日時・内容を記録しておくことで、学校側の責任を問いやすくなります。
注意点4:加害者の保護者との直接交渉は避ける
加害者の保護者との直接交渉は避けましょう。感情的な争いになることが多いため、弁護士や第三者を通す方が安全です。
注意点5:子どもの精神状態が最優先
慰謝料よりも、子どもの安全と心のケアが最優先事項です。必要に応じて転校やカウンセリングも検討すべきです。
注意点6:長期戦になる覚悟が必要
示談で終わらず、調停→裁判となることが多く、数ヶ月〜数年かかる場合があります。長期戦になる覚悟が必要です。
まとめ

いじめの慰謝料の相場、要件、種類、請求方法、注意点について徹底解説いたしました。
いじめによる慰謝料請求では、まず、いじめの存在と精神的苦痛を証明できる資料を集めることが最も重要です。
LINEやSNSのやり取り、友人や教師の証言、医師の診断書、学校への相談履歴など、客観的な証拠を確保する必要があります。
また、請求の対象は加害児童や保護者だけでなく、学校側が適切な対応を怠った場合には設置者に対しても求められる可能性があります。
手続きは内容証明による請求、示談、調停、裁判と段階を踏んで進めるのが一般的で、長期化することも多いため、早期に専門家へ相談しながら進めることが大切です。


